ShizuiNetのはじまり〜なぜSymbolを選んだのか〜

なぜ生物屋がブロックチェーンやっているの?

僕はよくなぜ生物バックグラウンドなのにIoTをやっているのかと聞かれます。実は、僕にとっては生物は究極の計算機に見えているからなのです。そして、人工知能とブロックチェーン。このふたつがついに生物と同じ土俵にシリコンの計算機を押し上げてきたので、そちらに移ったというわけです。

人工知能用のGPUで仮想通貨を掘って会社を作る

これからは深層学習型人工知能を研究テーマに取り入れて、ブロックチェーンで研究費を獲得できるんじゃないだろうか。JSTのさきがけ研究で十分にLinuxの勉強をしたし、細胞医療と組み合わせれば僕にしかできない研究テーマになる。最近流行っている事業化の仕組みで資金を集めて機材を揃え、自分でも出資して研究所を立ち上げて事業としてやったら面白いじゃないか。

しずい細胞研究所を作ってみよう!

しかし、ブロックチェーンでお金を稼ぐってのは、そんなに甘くなかったです。GPUによるマイニングも、研究費を稼ぎ出すどころか電気代で赤字になる始末。さらにMONAは史上初の51%攻撃を受け、ASICによるマイニングパワーによる寡占から、Proof of Workの信頼性は低下し、ビットコインの信用もぐらついてきました。

仮想通貨で儲けようという発想をやめよう

そう思っていた時、偶然NEM Technical Referenceを手に取ります。NEMはSymbolブロックチェーンの前身となった比較的古いタイプのブロックチェーンです。ネットでNEM技術勉強会としてこのホワイトペーパーの翻訳&解説(後のSymbol解体新書)を連載してみたところ評判が良く、投げNEMという形で資金が集まってきました。NEMコミュニティにはマイニングなどしなくても資金を集めることができる、一種の「寄付」のしくみが根付いていたのです。さらに、白書を一字一句読み進めるうちに、Proof of WorkではないProof of ImportanceというしくみでGPUなしで報酬も得られるから、入出金(トランザクション)を大量に引き起こすような仕組みを作れば、このブロックチェーンは大きく発展すると確信しました。

よし!ShizuiNet作ろう!

トランザクションを大量に発生させるには、細胞の移動そのものを、その都度ブロックチェーンに記録するようにすれば良い。100箇所の拠点がそれぞれ一日100のトランザクションを発生させれば、それだけで毎日10000トランザクションです。ただ問題がありました。NEM Technical Referenceをさらに読み込んでいき、NIS1を立ち上げて自分でもハーベストを始めてみて、PoIのトランザクション手数料報酬が驚くほど安いことが分かってきました。つまり、あまり儲からなかったのです。

ここまでやったんだから、毒をくらわば皿まで。

でも、読み込んだNEM Technical Referenceには、暗号理論にもとづいた慎重さと、技術に対するこだわりと、既存のブロックチェーンが抱える多くの問題点への対処法が詰め込まれていました。マイノリティーゆえの奥行きの深さ。

ただ、PoIの計算は負荷の大きさに対して、計算結果がほとんど意味をなしていないのは明白でした。PoIは、ほぼ定数となったアウトリンクマトリックス計算結果が、10000XEMの最小ハーベストアカウントが若干有利になる仕組みとして働いているだけだというのが分かったのです。

カタパルトでPoIは消えてPoS+が採用される。

NEMの次世代ブロックチェーンのプロトタイプ「カタパルト(現在のSymbol)」では、PoIをばっさり切り捨てて、支払った手数料に応じてインポータンスが上がる仕組みが採用されました。ノード運用コストが低く、報酬が平等で安定していることは大きなアドバンテージになります。

これはSymbolに賭けてみてもいいんじゃないか?

Symbolテストネットのデバッグは、日本のコミュニティによって進められました。僕は科学的視点に立ったトランザクションデータの解析を担当し、超高負荷時にも安定してトランザクションが処理できることを論文にまとめました。そして、Symbolメインネットが立ち上がると同時にエアドロップが貰えて、さらに価格が高騰。これで起業資金を集めることができました。

面白いことをやっていれば、なんとかなる

現在Symbolはアルトコインの中でも低迷している部類に入ります。それなのに僕がこの技術に賭けている理由は、多分楽しいからです。NEM/Symbolの仕組みに惚れ込んで楽しんでいたら、いつの間にか会社ができてしまったのです。しかもSymbolにはまだまだ未開拓の技術的可能性がたくさん残っており、コミュニティは少数精鋭で、そんな新天地であと10年頑張ってみようと思えたのです。取引所価格は低迷を続けていますが、とにかく楽しくやっていればいいんだという雰囲気が好きです。

最近では、自分で翻訳したホワイトペーパーと、コミュニティから発行されたガイドブックを使って、実習にSymbolブロックチェーンを使っています。自分が育ててきたブロックチェーンというのもありますが、ちょうどレゴみたいに直感的に理解できるモジュール構造が、学習にはとても向いていると感じるからです。ということで、なぜSymbolなのかについての僕なりの解説でした。