1. WanaPiをコロナ対策に
職場では、コロナ対策で毎日の体温とテレワーク中の行動記録をつけるように言われています。でも渡されたのは日付だけが並んだエクセルシート(笑)。毎日エクセル開いてちまちま記録するのは面倒くさいことこの上ないですよね。結局真面目に記録している人はごくわずかだと思います。
2. WanaPiを使った所在記録
そこで、自宅(home)、クリーンルーム(5S18_CPC)、オフィス(unit13)の3箇所にWanaPi端末を置いて、自分の所在管理をしてみました。WanaPiは、「その時にどこにいたか+好きな情報」を、ブロックチェーンに記録するお手軽IoTソリューションです。現在はNIS1で稼働していますが、もちろんSymbol や mijin でもバッチリ動きます。
ありあわせのバーコードリーダーとラズパイをつなげばWanaPi端末になります。上の動画はアマゾンの格安バーコードリーダーとRaspberryPi Zeroをつないだだけのものですが、これで問題なく動きます。この端末で匿名化したID (実名も書き込めますが二度と消せないので個人情報には注意)を印刷したカードを読み込ませると、バーコードの内容がNEMのブロックチェーンに書き込まれます。手数料は一回0.15XEMかかりますが、一日せいぜい2〜3回なので微々たるもの。
3. 毎日の体温も一緒に記録してしまおう!
バーコードは、カードに印刷したものでもよいし、スマホ等でその都度作った画面表示のバーコードでも構いません。なので、自宅では体温などの付加情報を含めたバーコードをiPhoneのアプリで作って、読み込ませています。そして出来上がった毎日の記録がこちら。XEMBookさんのXEMMessageで見るとシンプルで見やすい!そして、NIS1版XEMBook閉鎖にともない、XEMBookさんが公開してくださったコードで、WanaPiビューアが完成。
バーコードをWanaPi端末にかざすだけで、設置した場所:バーコードの内容をNEMブロックチェーンに刻んでくれるので、上のような記録が残ります。ブロックチェーンに記録されるので、消すことも改ざんもできません。上の例でworker01というのが僕のIDで、worker01だけで終わってるのはカードで読み込んだやつ、それにtemp35.9とか続いているのが、アプリで作ったバーコードを読み込ませたもの。カードは手軽で、アプリは汎用性高めです。
4. バーコードを使わずスマホから直接体温を記録する
さらに、体温計の数値を毎朝バーコード作成アプリから入力するのが面倒になったので、BlynkというIoTアプリを使って、Raspberry Piに直接データを送るようにしました。専用アプリの開発ではないのでとても簡単に作れました。IDのみですが、バーコード読み取り用にも使えます。
体温計で測った数値を入力して、ボタンを押すだけです。まだテスト段階ですが、グラフもついてます(熱があるように見えるのは単なるテストデータで、コロナに感染したわけではありません)。これから毎朝の体温記録が楽になります。
そして、WanaPiビューワーを使えば、XEMBookの抽出機能を使って体温データだけ取り出すことも可能です。これ作ってから1年以上ほぼ毎日体温記録してる僕もたいがいですが、1ヶ月分くらいなら簡単にプリントアウトして提出できますね。
5. Symbol世代のIoT
そんなこんなでいろいろ記録しはじめてから、1年以上。使い勝手が良くて、毎日記録するのがまったく苦にならないです。職場への報告も、XEMMessageのリンクをメールで送って、ほらちゃんと記録しているでしょ?って言ってます。特別なサーバーもアプリも必要ないため、コストパフォーマンスは圧倒的です。
今後のことですが、個人で使う分には、安価に記録できるNIS1をこのまま使っても良いと思います。しかし、ユーザーが数百人を超えたあたりからNIS1では辛くなりそうです。高い処理性能を持つSymbolが立ち上がれば、大企業による数万人規模の退勤管理や健康管理も可能になるでしょう。もしそうなったら、一日に数万件以上のトランザクションが生まれることになります。もうひとつのNEM HUBタスク「SYMBOLのトランザクションを1日100件増やすアイデア」を軽くクリアできます。でも、NEM HUBは一つの記事を複数のアクティビティに投稿できないので、もうちょっと幅広い利用方法を考えてから別記事に書こうと思います。
WanaPiは、NEMのお家芸であるモザイクとメッセージ機能のみを使い、Ethereumのスマートコントラクトなどよりはるかに手軽に構築でき、安全、確実にデータ管理ができます。最近では体重計や血糖値計に、スマホやiPhoneと連携できる機能がついたなんちゃってIoTデバイスがどんどん増えてきています。これらはスマホや専用サーバーにデータを記録するものばかりですが、ブロックチェーンに直接記録すればもっと簡単に優れたIoT環境が実現できることに、そろそろみんな気づいても良いと思うのです。
6. DIYに適したデバイスとは?
DIYを広めるということは、WanaPiデバイスを多くの人に作ってもらわないとなりません。そのためには、材料の値段が大事。そこでWanaPiは、1万円でDIYを目指します(ネムギルドイベント参加記事)。イベント記事では、バックアップ用バッテリーやケースがついていますが、これらはなくても動きます。要はバーコードリーダーとラズパイだけあればよいのです。
これは、実際に職場で稼働しているWanaPi2デバイスです。ラズパイゼロに市販のバーコードリーダーを挿しただけですので、これなら1万円以下で作れます。
7. ラズパイの選択肢
現在、ラズパイには安価なものから高性能なものまで、いくつものバリエーションがあります。
こちらの記事では、ラズパイ4を勧めていますが、WanaPiに使うならラズパイ3B+が良いと思います。なぜかというと、zeroのマイクロUSBには、市販のUSBバーコードスキャナが接続できない(アダプタが必要)。4だと、マイクロHDMIという規格なので、普通のHDMIケーブルが挿さらない。そしてこれらの小型コネクタは抜き差ししているうちにこわれる。つまりケーブル類が手に入れやすく、壊れにくいというのが3B+を推薦する理由です。もちろん、WanaPiはzeroでも4でも動きますので、小型で省電力にしたかったらzeroに、Blynkなどのサポートアプリも動かしてより複雑なことをしたかったら4を使うなど、ニーズに合わせて選べるようにします。昨年発表になった、Pi zero2 Wは、これらのさまざまな問題を解決することができる性能を持っていますが、世界的な半導体不足と技適の問題で、まだ日本では入手できません。早く使ってみたい。
8. 使いたくなるようなユースケースを考える
これまで実用化できたWanaPiのユースケースは以下のようなものがあります。これらは実際に僕が使ってみたものです。
- 制限エリアへの入室記録
- テレワークにおける、労働場所と時間の記録
- コロナウィルス感染症対策のための体温管理
- トイレに設置して排泄時間を記録
それ以外にも、
- 体重や摂取カロリーの記録
- 一日に歩いた歩数
- 自動車やバイクの燃費管理
- 子供のゲームや勉強時間の管理
- 睡眠管理
など、いろいろ考えられると思います。多くの人に作ってみたいと思ってもらうためには、考えてみるだけでもワクワクするようなユースケースをたくさん提案していくことが大切だと思っています。
例えばこれは、Bluetooth体温計をShizuiNetデバイスに直結して、体温を測定すると自動的にブロックチェーンに記録できるようになってます(TemPi)。こういうのが実際に動いているのを見れば、医療機器の技術者が興味を持つかもしれません。体重管理ならタニタ、燃費管理なら自動車やガソリン、カーナビ企業などにアピールするはずです。
9. Symbolならできます
企業によるユースケースがなぜNEMのNIS1ではあまり広まらなかったかというと、トランザクションの容量問題がありました。みんな電力さんがテスト段階で作り出した数万トランザクションによって、NIS1の毎分120のスロットは埋め尽くされてしまいました。SymbolはNIS1の40倍の容量があると言われています(設計上の限界はもっと高いと思われます)から、企業によるProof of Concept(PoC)検証にも十分に耐えます。これが、Symbolがエンタープライズにアピールできるポイントになります。
趣味のDIYで作ってみたら面白いものができたのでブログに書いてみた
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企業の技術者の目に留まる
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企業によるパブリックチェーンでの大規模実証実験成功
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プライベートチェーン構築でサービス開始
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日本がIoT大国になってみんなWanaPi!
以上、アイデア記事としてはちょっと長くなりましたけど、Symbolがどのくらいすごいのかというのが、少しは伝わりましたでしょうか。Symbolの正式リリースが本当に楽しみです。
10. ShizuiNet データベース
CellPi(細胞トレーサビリティデバイス)の開発進行に伴って、WanaPiがSymbol/dHealthに対応したWanaPi2に進化しました。操作はバーコードをスキャンするだけ。Webサーバーがブロックチェーンに定期的に問い合わせて、データベースを作っています。もちろん検索可能。トイレに設置して、しずいトイレットなんてものも作りました(現在ははずしています)。取引所上場が限定的なdHealthは手数料も驚くほど安く、税金対策にもそれほど気を使わずに運用できています。実際これからは、通貨としての価値に依存しないブロックチェーンの使い方がどんどん増えていくと思います。