会社設立にあたって

再生医療の現場に安全な細胞をとどける

われわれは岐阜大学で、捨てられる親知らずや乳歯から細胞を取り出し、再生医療に応用する研究をしています。歯髄細胞と呼ばれるこの細胞は、硬い歯の中で守られています。脊髄損傷を治療したり、歯周病を予防することができ、iPS細胞の原料にもなります。

しかし、細胞は提供していただいてから、患者さんに届くまでのあいだに様々に変化します。取り扱い方が悪いと、移植しても充分な力を発揮できなくなることもあります。そのために、わたしたちは細胞の品質管理に、ブロックチェーンという技術を世界ではじめて導入します。ShizuiNetは細胞の「ヒストリー」を完全記録することにより、安心して治療に使える細胞を再生医療の現場に届けます。

「あきらめない くじけない むりしない」

新着情報

第3期決算書

株式会社しずい細胞研究所の決算報告です。本日(10月29日)の株主総会にて承認されました。

ブロックチェーンEXPO秋の出展社ページが公開

NEMTUSブースでポスター出展予定です。出展社詳細ページが公開されました。前回に比べて、しずい研が何を目指しているのかが、より分かりやすく伝わる工夫をしています。ふと思いついたDIYできるトレーサビリティというのが今回 …

〜ShizuiNet〜

ShizuiNetの概要

われわれが提供するShizuiNetは、ブロックチェーンに、細胞の製造や輸送などに関する様々な情報を記録するデータベースシステムです。細胞を提供してくれるドナーさんから患者さんまでのデータを安全に保管する役目をします。

細胞の輸送や、製造現場で使われるシステムには互換性がなく、専用システムの構築と維持には多大なコストがかかります。そこで、岐阜大学しずい細胞プロジェクトで培われた20年の経験を元に、細胞と紐付いたバーコードデータを記録し共有するしくみが作れないかと考えました。

細胞を保存するチューブにはバーコードIDがついています。次に、これをブロックチェーンに記録するデバイス「CellPi」を作りました。CellPiはバーコードIDを読み取って、タイムスタンプとくっつけてブロックチェーンに送信します。匿名化されたバーコードを使う事で、個人情報にも配慮しており、プロトコールは岐阜大学倫理審査委員会の承認(既存試料を用いたヒト口腔由来細胞からのiPS細胞の誘導とトレーサビリティに関する研究:承認番号 2023-322)を得ています。

まずはテックピューロのプライベートブロックチェーン「mijin」でスタート。ただ、ブロックチェーンを1施設で支えるのはコストがかかりすぎるため、基本コンセプト設計とPoCを終えたところで、mijinと基本コードを共有しているパブリックブロックチェーンSymbolのテストネットへと移行しました。

CellPiは岐阜大学医学部の学生実習と、地元企業との連携で作ったバーコード読み取りデバイス。細胞の凍結チューブにつけられたバーコードIDを読み取り、無線LANを通じてSymbolブロックチェーンに直接書き込みます。ユーザーがすることはバーコードを読み取るだけのシングルアクションですから、ブロックチェーンに関する知識は必要ありません。RaspberryPi zero2で動き、小型軽量化にも向いています。

ブロックチェーンの情報を一時保存するデータベース「MoniPi」

ブロックチェーンに記録されたバーコード情報はそのままでは取り扱いが難しいです。データベースサーバー(MoniPi)は、ブロックチェーンに定期的に問い合わせをおこない、トレーサビリティ情報をダウンロードします(単体で動く軽量エクスプローラー)。ユーザーはスマホやPCのブラウザからMoniPiに接続し、記録済みのトレーサビリティ情報に素早くアクセスできます。これがブロックチェーンが苦手とする過去に遡っての素早いデータアクセスを可能にする仕組みです。元台帳がブロックチェーンに保存されているため、新規稼働時や故障復帰時など,MoniPiはいつでもブロックチェーンから改変されていないトレーサビリティ情報を再構築が可能です。

MoniPi検索

これらのデバイスが内蔵する小さなデータベースは、常時ブロックチェーンと同期しています。これによって中央サーバーにすべてのデータを蓄積するよりもメンテナンスコストが少なくて済み、ブロックチェーンの強固なセキュリティの恩恵を受けることができるようになっています。

MoniPi:こんなに小さいけど、縁の下の力持ち「MoniPi」。CellPiが記録したSymbolブロックチェーン上のトレーサビリティ情報を常時モニターして、新しいデータがあれば内部のデータベースに蓄えます。Webサーバー機能によって、ユーザーはブラウザを通して検索や表示などの様々なサービスを使うことができます。RaspberrPi4で動きますが、大量のアクセスにも耐えられるよう大型サーバーにスケールアップして公開することも容易です。

クリーンルームの管理にも活用

細胞調製や保管に利用するクリーンルーム(Cell Processing Center: CPCと略します)の管理にも、ShizuiNetは利用されています。CPCの入口に設置されたCellPiの簡易バージョン「WanaPi」1台で、管理区域への入室、細胞保管用タンクへの液体窒素の補充、残量検査結果などすべてを記録します。以下実際に使われている記録です。

CPC入室管理
登録者:http://shizuinet.tplinkdns.com/cpc.php
ゲスト:http://shizuinet.tplinkdns.com/cpc-guest.php
実習生:http://shizuinet.tplinkdns.com/cpc-student.php

液体窒素の管理
http://shizuinet.tplinkdns.com/n2.php


リモートワーク管理への応用

公共のブロックチェーンと、省電力なデバイスのみで構成されるShizuiNetは、様々な用途に応用できます。例えば私自身がコロナ禍の時に、ShizuiNetを使ってリモートワーク管理をやりました。勤怠管理だけでなく、日々の体温や運動の記録、服薬記録などもすべてバーコード化して、CellPiを簡略化したWanaPiというデバイスで3年以上記録を残しています。簡単に改造できる手軽さと、自分の思い通りの記録を残せることから、DIYするトレーサビリティと呼んでいます。


リモートワーク記録の例


農業分野の産地証明にも(共同研究)

共同研究を通じて米や自然薯などの農産物トレーサビリティにも応用されています(Canna-Pi)。公共ブロックチェーンを利用しているので、トラブルにも強く、元データからいつでも最新情報での再構築が可能です。ブロックチェーンのアクセスポイントは世界中にあるので、複数のVPNやクラウドサービスが停止しても、デバイスからのデータ書き込みを継続させることができます。トレーサビリティ情報だけでなく、写真などを別サーバーにアップロードして、顧客に訴えるリッチコンテンツも提供しているようです。このように非常に高い可用性を保ち、堅牢で改変されることがない仕組みを軸に、さまざまな発展性を持つのはブロックチェーンならではと言えるでしょう。

現在は、岐阜大学の秘密保持契約や共同研究契約の仕組みを使って企業や機関とソースコードやノウハウを共有しています。株式会社しずい細胞研究所の役目は、専用デバイスの設計のお手伝いをすることです。幅広いトレーサビリティのニーズに合わせた柔軟なカスタマイズ(DIY)が可能ですので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。


メンバー

手塚 建一(代表取締役)

1964 東京都町田市生まれ
1987 京都大学理学部卒業
1987 ヘキストジャパン(株)医薬総合研究所分子生物学研究室
1991 明海大学歯学部口腔解剖第一講座, 助手
1994 Merck Research Laboratories, Postdoctoral Scientist
1997 東京理科大学生命科学研究所, 講師
2002 岐阜大学医学部再生医科学専攻, 助教授
2004 科学技術振興機構, さきがけ研究員(兼任)
2007- 岐阜大学大学院医学系研究科, 准教授
2022- 株式会社しずい細胞研究所, 代表取締役(兼任)

私は長年にわたって骨や歯などの研究をおこなってきました。岐阜大学に移ってきた時に、捨てられる親知らずからたくさんの細胞が採取できることを知り、この細胞を世界に届けたいと思い会社を立ち上げました。これまでの経歴や詳しい業績は以下の研究室のホームページを御覧ください。

岐阜大学大学院医学系研究科手塚研究室のホームページ

会社概要

会社名:株式会社しずい細胞研究所

所在地:501-1194 岐阜県岐阜市柳戸1-1
岐阜大学大学院医学系研究科再生機能医学分野内
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代表者:手塚建一

事業内容:細胞の品質・流通管理システムの開発

資本金:350万円

会社設立:2022年4月1日